大好きな父も母もいなくなり、与えられた環境に耐えられなくなった主人公の更紗。文に出会って自分らしさを取り戻すが、実質誘拐犯である文と離れ離れになってしまう。しかし15年の時を経て再開し、ふたたび二人の人生に変化がもたらされる。波乱続きのストーリーに、どうか幸せになってほしい、と願いながらページを捲る、そんな作品でした。
人と人って難しいです。言いたいことも言えないこともたくさんあって、それぞれに事情も持っていて。善意という建前で好奇心を包んで人の心にずけずけ入り込んでくる人もいれば、本当に優しい人もいて、でもそれを見抜くのは難しくて。結局人はひとりでは生きていけないんだと、読み終わってから改めてうんざりしました。
わたしたちは親子ではなく、夫婦でもなく、恋人でもなく、友達というのもなんとなくちがう。わたしたちの間には、言葉にできろようなわかりやすいつながりはなく、なににも守られておらず、それぞれひとりで、けれどそれが互いをとても近く感じさせている。
わたしは、これを、なんと呼べばいいのかわからない。
凪良 ゆう(著)『流浪の月』p268より引用
出版:東京創元社(2022/2/26)
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